11月29日(木)、第十九回木曜読書会を開催しました。
課題図書はガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』(河出文庫)。参加者8名、見学1名、レポートのみ参加2名の計11名の方にご参加いただきました。
作者のカナファーニー(1936-1972)はパレスチナ出身の作家で、パレスチナ解放運動のジャーナリストとしても活躍しましたが、車に仕掛けられた爆弾により36歳の若さで爆殺されました。
この本を課題に選んでくださったHさんは大学時代に中東文学を専攻されており、「今まで読んだ本の中で一番衝撃だった」とのこと。Hさんの仰る通りとてもインパクトの強い本で、いつもほのぼのな当会もいつもより少し重めで真剣な雰囲気…?
以下、各課題の簡単なまとめです。
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◆課題2◆あなたにとって「聖地」と呼べる場所はありますか。あればその場所を教えてください。
メッカ、近くの山の上の神社、出身県、学生時代にいた街、ディズニーシー、舞台の上、犬小屋の中、夢の中の飲み屋街、歴史にゆかりのある場所、思いつかない などなど
◆課題3◆『ハイファに戻って』に出てくる、「人間は結局、それ自体が問題を体現している存在」(p247)とはどういう意味だと思いますか。
・人間は理性を持つ生き物であるにも関わらず、その理性では理解できない不条理を併せ持つ存在でもあるということ
・それぞれの立場の違いによって問題が生まれてしまうこと
・人間は生まれながらに被害を生んだり被ったりする存在であるということ
・政治問題、民族問題などの「問題」にからめとられ、自分が問題に占拠されてしまっている状態
・人間は他者との関係の中でしか生きられない存在だということ
◆課題4◆感想
・自分には遠く感じられるパレスチナ問題の渦中にいきなり当事者として立たされたような気がするが、アラブの人々の考えも感情も、十分共感可能なことを知った
・今まで素通りしてきた問題だったので、時代背景や宗教について調べて考えることが楽しかったが、問題そのものは全く楽しいものではなく、辛い歴史や写真に多く直面してショックを受けた
・ぼーっと生きてんじゃねーよ!と頭を殴られたような小説
・八方ふさがりで閉塞した状況の中で、生きる糧をどう求めるか。題名からは想像できない作品の内容
・パレスチナ問題というのは、民族の思想上の違いから対立しているようなステレオタイプではなく、生活の場を奪った/奪われた、力によって抑圧した/された現代人同士の争いであるのが分かる
・遠い国に旅をして遠い人々を垣間見て戻ってきたような感覚。遠すぎるのであまり長く深く滞在できなかった
・ユダヤ人に、かつて自分たちがされてきた虐殺を今はパレスチナ人にしているということについてどう思っているか聞いてみたい
・平和な国では戦争のような大きな物語をバーチャルに捉えてしまう。小さな物語と大きな物語の差異について考え込んだ
・恐ろしかった。悲劇がそこら中に転がっていてまた新たな悲劇を生む。この感情を昇華させたのがすごい
・ファストに消費できる本じゃないけれど、色んな人と話すことで滋養に変わる一冊
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今回も終了時間いっぱいまで使い、様々な角度から課題本について語り合いました。いつもより言葉に詰まってしまう参加者が多かったのは、それだけカナファーニーの作品が私たちの世界とかけ離れた、けれど確実に存在しているというリアルな重みを持っているものだったからかもしれません。
終了後の打ち上げでは皆さんいつもの調子に戻り、お酒を片手に終電までワイワイ盛り上がりました。ご参加くださった方々、今回もまことにありがとうございました。
さて、次回は12月20日(木)、課題図書は吉本ばなな『キッチン』(新潮文庫)です。※最終木曜ではなく一週前開催なので注意※
次回で当会もついに二十回目。いつも支えてくださる皆様に感謝いたします。年の瀬でお忙しい時期だとは思いますが、こんなときこそ息抜きに文学の世界に浸りましょう。次回もたくさんの皆様のご参加をお待ちしております。
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